先日、当サイトではこのコラムをアップしました。
>>>投資詐欺・悪徳商法から定期預金を守るには?
当該コラムをアップした矢先に発覚したのがMRIインターナショナル社の投資詐欺事件です。被害額は1,300億円とも言われており巨額ですね。上記コラムでご案内した、安愚楽牧場事件(被害額4,207億円)や、エル・アンド・ジー(円天)事件(被害額2,260億円)、豊田商事(被害額2,025億円)には一歩及ばないものの、被害額としてはワースト5に入りそうな規模と言えます。
ちなみにMRIインターナショナル社が提供していたのは「MARS投資」と呼ばれる運用商品で、これはアメリカの診療報酬債権に投資するものです。アメリカの診療報酬債権は回収率が極めて低いために安く流通しており、それを安く購入し、しっかり回収できれば、多くの利益が出る、とされる投資スキームですね。
実際にMRI社が顧客から集めた資金を本当にこのビジネスに投資していたのかは分かりませんが(少なくとも最近2年間はまともに投資していなかったようですが)、この投資スキーム自体は一定の合理性があります。
ただ問題は、日本の投資家に対して円建ての固定利率で6.0%〜9.6%のリターンを約束していた点ですね。
何度もご案内しているようにリスクとリターンは表裏一体です。日本国内での代表的なノーリスクの金融商品といえば普通預金・定期預金などの銀行預金ですが、ご存知の通り0.0X%といった水準です。つまりノーリスクであればこうした極めて低いリターンしか得られないところ、8%前後のリターンがあるということは、それに呼応するリスクがあるはずです。
通常は為替リスクが考えられますが、MARS投資の場合、それはないということです。
次に価格変動リスクですが、固定利率の商品なのでそれもありません。
あとは回収できなかったことによる、焦げ付きリスクですが、それも今まではなかったようです。
とすると・・・率直に言って詐欺としか考えられません。やはり8%前後のリターンがあるのであれば、同じくらいの損失が平均的に発生していなければつじつまがあいません。
仮にものすごいノウハウがあって、本当にノーリスク・ハイリターンを実現できているのであれば・・・そもそも日本の個人投資家から資金を集める必要は一切ありません。低金利&運用難は日米の銀行が抱える共通の問題ですから、多くの銀行がはるかに低い金利でお金を貸してくれるはずです。
もし銀行からの借入が2%なのに、個人投資家に7%のリターンを払うとすると、MRI社側は差し引き5%くらい損していることになります。そんなお人よしがいるわけもありませんし、万が一いたとしても広告を打つ必要がありません。人気が殺到するからですね。
銀行からの借入ができず、わざわざ高利を約束し、広告を打ってまで資金集めをしているということは・・・詐欺の可能性が極めて高くなりますね。実際、詐欺だったわけですが。
上記コラムでもご紹介したようにこうした投資詐欺を防ぐためには
・ウマい話などない(あっても広告をする必要がない)
・今の時代、1%超のリターンは基本的に怪しい
・銀行で販売している商品しか購入しない
といった原則を参考にしていただければと思います。
>>>投資詐欺・悪徳商法から定期預金を守るには?
加えて、もっと端的に言えば「高めのリターンを約束する広告は全て詐欺」と考えていいかもしれません。
上記の通り、世界的に大規模な金融緩和が実施されている現状では、低金利&運用難は各国共通の悩みであり、本当に筋がいい運用商品であればあっと言う間に世界中の銀行や投資家から資金を集めることが可能だからですね。
繰り返しになりますが、わざわざ広告をする必要などないのです。参考になさってください。
そういう意味では今回のMRI事件で罪深いと思うのはマスメディアですね。MRI社のホームページでは以下の通り、日経新聞系列のニュース専門チャンネルである日経CNBCで放映されたインフォマーシャルが、広告素材として利用されています。
また、別の記事によれば、日経CNBCはこうした広告番組以外にも、MRI社と共同で個人投資家向けセミナーを何度も開催していたようですし、毎日新聞も2004年からずっとMRI社の広告を定期的に掲載してきたようですね。
確かに「高めのリターンを約束する広告は全て詐欺」という姿勢で間違いないと思いますが、インフォマーシャルであれば一見すれば通常の番組のようですので広告と気づかない人もいるかもしれませんし、広告は広告でも、さすがに全国紙の広告なら信頼できると感じた方も多いと思います。
上記2社以外にも多くの投資系雑誌内で、MARS投資の広告を見ましたので、これらの雑誌も「同罪」と言えます。
とても巧妙な運用手法であったり、資金集め方法であればまだ話は別ですが、このMRI社の商品は明らかに「詐欺くさい」商品でしたからね。やはり広告を掲載したメディアの罪は深いです。
マスメディアも単に事件報道をしたり、金融庁&財務省の監督責任を糾弾するだけでなく、こうした詐欺の共犯となってしまった事実を真摯に受け止め、自浄能力を発揮してほしいと思います。
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