前回のこちらのコラムでは、ハンディキャップを持つ方々への公的なサポートの1つである「成年後見人制度」で、後見人に選定された、元東京弁護士会副会長の弁護士が、あろうことか被後見人である女性の定期預金を解約し、合わせて3,400万円もの預金と定期預金を横領した、という事件をご案内しました。
>>>東京弁護士会副会長の弁護士が定期預金を盗む時代!?
その後の報道によれば、この後見人制度を悪用した、後見人による定期預金・預金の着服は多数起きているようですね。ぜひ実効性のある再発防止策を期待したいと思います。
しかしながら、こうした定期預金・預金の着服というのは残念ながら後を断ちません。やはりそれだけ、お金の魔力は大きいということなのでしょうね。
さて預金者として弁護士も信頼できないとなると、最後の頼みは銀行員などの金融機関職員、ということになりますが、やはりそこにも一定の不届き者がいるようで、上記記事では、さわやか信用金庫の元職員が2008年12月から2011年9月にかけて、顧客6人の預金を無断で解約し、合計約4,700万円をだまし取った、ということです。
世も末ですね・・・。
ただ、こうした銀行員の定期預金の着服というのはどんな時代にも一定割合起きています。銀行の隠蔽体質を考えれば、われわれ預金者が想像する10倍、もしくは100倍くらいの規模で起きているかもしれません。
日本で金融機関の関係者といえばどれくらいいるのでしょうね?メガバンクで10万人、ゆうちょ銀行も同じくらいの規模だとすると20万人。日本の金融機関は5、600あるのでしたっけ?平均500人とすると30万人。トータルでは50万人ということになるのでしょうか?もう少し多いかもしれませんが。
その中で生活が苦しい人が1%いるとして、さらに犯罪までしてしまう人が1%くらいいるとすれば1万人に1人ですから、ざっくり年間50件の預金横領被害が起きていることになります。
ま、何の根拠もない試算ですが、年間50件なら記者の感覚からすれば概ね想定内ですね。もう一桁、二桁増えるようであれば、「想定外」ですが。
いずれにしても金融犯罪は何も悪徳詐欺グループばかりではなく、弁護士といったステータスが高い人はもとより、銀行員などのお金の扱いになれ、社会的信用が高い人も起こす可能性がある、という十分な認識が必要です。
ちなみになぜこの信金職員氏が顧客の預金を無断で解約し、着服できたかといえば「渉外業務」を担当していたからですね。つまり、百貨店の外商のように顧客の家に直接訪問し、お金や通帳、書類を預かっていたわけです。
それなら書類を改ざんしたり、偽造することで、着服することは比較的容易だったと言えます。こうした渉外担当への牽制機能やチェック機能がどのように働いていたのかは分かりませんが、結果的に約3年間に渡りこうした被害が続いたことを踏まえれば、信用金庫側のチェック体制が形骸化していたのは間違いありません。猛省を促したいと思います。
もちろん誰が悪いかと言われれば、この職員氏が100%悪いのは間違いありませんし、そうした不正に気づかなかったさわやか信用金庫にも一定の責任があります。
ただ、被害に遭った預金者の方々も、もう少し早く気がつくことはできなかったのかな?とは思います。被害に遭った方は6人もいたようですし、少なくとも通帳記帳すれば発覚したのではないかと思います。それだけ銀行員というのは信頼されている、ということなのですかねぇ。実際には2012年1月に被害女性の1人が問い合わせたことで発覚したようです。
しかしながら今回の事件での救いは、やはり金融機関だけあって、さわやか信用金庫の発表をチェックすると、その被害金額全額を同金庫が弁済した、とのことですね。MRI事件や安愚楽牧場事件ではこうは行きません。信頼できる会社の職員を信じた、という点ではまだベターな選択だったと言えそうです。
とは言いつつ気をつけないといけないのは、仮に犯罪者が大組織の社員を名乗っても、それ自体が嘘である可能性はゼロではありません。オレオレ詐欺改め、「母さん助けて詐欺」もほとんどはそうした詐称があるのではないかと思います。仮に今回の事件が、「さわやか信用金庫の職員を名乗る全くの部外者」ということであればもちろん、さわやか信用金庫が被害額を補填することはありません。そこまでお人よしではないですよね。
預金者としては、最低限、そうした会社に電話をして実在を確認する、ということが必要です。もちろん、実在の人物名を騙っている可能性もあり、最終的にはやっぱり人任せにせず、自分でその会社に行って取引する方が早い、ということになるのかもしれませんが・・・。
ということで、前回のコラムの結論とも被りますが、一般的な預金者がこの事件から得られる教訓は・・・お金に関して100%信用できる人はいない、ということですね。いくら肩書きが立派でも、その人の本当のモラルがどういったものなのかは分かりませんし、いくらモラルが高くても魔が差すことだってあると思います。
場合によっては、本当はいい人なのに、お金を預けたばかりにその人に犯罪を犯すキッカケを与えてしまった、なんてことになると、預けた側にも責任はゼロではないのかもしれません。
やはりお金に関しては人は信用しない、という姿勢が重要ですし、もし何らかの理由で資金を預ける場合でも、しっかりした組織であることが大切であることは今回の事件でも証明されました。大組織であれば仮に社員が不祥事を起こしても、誠実に対応してくれる可能性が高いですからね。
「信用しない」と書くと、世知辛く響くかもしれませんが、よく考えれば人生の中で、どうしても自分の資金の管理を人に任せないといけない状況というのはほとんど全くないはずです。
また、そうした姿勢を貫くことで、ほとんどの投資詐欺や金融詐欺、悪徳商法から、定期預金などの自分の大切な預金を守ることができますね。特に自宅や電話に多くの勧誘がやってくる・かかってくる方は参考になさってください。
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